一言で言うと

FX のブレイクアウトは、レンジの上限・下限や直近の高値・安値を価格が抜ける動きに注目する考え方です。 抜けた方向に値動きが加速し、新しいトレンドの兆しとみなされることが多いです。 一方で、抜けた後に元の範囲へ戻る「だまし」は完全には避けられない、とされています。

ブレイクアウトの手法を調べると、「終値で判断する」「抜けたらすぐ入る」など、言うことがばらばらで迷いませんか。 この記事では、何を「抜けた」とみなすか、よく紹介されるルールの例、だましの扱い、弱点を順に整理します。 最後に、自分のルールを書き出して過去チャートで検証する方法も紹介します。

ブレイクアウトとは

ブレイクアウトとは、意識されてきた水準を価格が超える動きのことです。 対象は、レジスタンスライン(上値の抵抗線)、サポートライン(下値の支持線)、直近の高値・安値などです。 上限を抜けるのが上方ブレイクアウト、下限を抜けるのが下方ブレイクアウト(ブレイクダウン)です。

レンジ相場の上限・下限を抜ける動きは「レンジブレイク」とも呼ばれます。 上抜けを「上放れ」、下抜けを「下放れ」と言うこともあります。 抜けた後はトレンド相場に移りやすい、と説明されることが多いです。

なぜ動きが加速すると説明されるか

よく挙げられるのは、抜けた水準の周辺に注文が集まっている、という説明です。 何度も意識された水準ほど、新規・利益確定・損切りの注文が集まりやすいとされます。 抜けると、損切りや逆指値の注文と、流れに乗る新規の注文が重なり、動きが加速すると説明されます。

ただし、これは解説で共通する説明であって、データで検証された因果ではありません。

パターン記事との関係

レンジや三角形の保ち合いは、値動きの幅が狭まり「エネルギーがたまる」状態と言われます。 そのエネルギーがブレイクで放たれる、という流れで説明されることが多いです。 ただし、どちらに抜けるかは、抜けた後にしか分かりません。

形と完成の条件は、三角保ち合い、ダブルトップ、三尊(ヘッドアンドショルダー)の記事で解説しています。 この記事では、抜けを手法として扱うときの組み立て方を中心に扱います。

何を「抜けた」とみなすか

ブレイクアウトのルールを作るとき、最初に決めるのは「どの水準を」「何で抜けたと判定するか」です。

抜ける対象

よく紹介される対象は、次のとおりです。

抜ける対象 内容
水平な抵抗線・支持線 レンジの上限・下限、何度も止められた価格帯
トレンドライン 高値同士、安値同士を結んだ斜めの線
一定期間の高値・安値 直近の高値・安値、過去〇本の最高値・最安値(チャネル)
チャートパターンの線 三角形の線、ネックライン
ボリンジャーバンド バンドの幅が縮んだ後のバンド抜け(スクイーズ)

どの高値・安値を結ぶかで、線の位置は変わります。 株式向けの解説(StockCharts)では、線ではなく「ゾーン(価格帯)」で考えるよう勧めています。 ほんの少し上で引けただけのブレイクは、意味が薄い場合があるためです。

終値で判断するか、高値・安値で判断するか

抜けの判定には、大きく 2 つの考え方があります。

  • 終値で判断する:足が確定したとき、終値が線の外にあればブレイクとみなす
  • 高値・安値で判断する:足の高値(下なら安値)が線を超えた時点でブレイクとみなす

チャートパターンの解説では、終値で抜けた時点でブレイクとみなすものが多いです。 ヒゲだけの抜けは、ブレイクと言い切れないとする解説もあります。 終値での判断の詳しい考え方は、三角保ち合いの記事を参照してください。

一方で、すべてのルールが終値を条件にしているわけではありません。 後で紹介するタートル・ルールの再現例は、足の高値が直近高値を超えたかで判定しています。 FX 向けの解説でも、チャネルを「1 pip 超えたところ」とする例があります。

水平な抵抗線のゾーン付近で、高値だけが線を超えて終値は内側で確定した足と、終値が線の外側で確定した足を比べた図(架空のサンプルデータ)

2 つの考え方は、だましと遅れのトレードオフとして整理できます。

判定の考え方 利点 弱点
終値で判断する ヒゲだけの抜けを除ける 足の確定まで待つぶん、抜けた後の価格になる
高値・安値で判断する 抜けた時点で判断できる ヒゲだけで戻る抜けも拾う

どちらがよいかを示す FX のデータは、この記事の調査では見つかりませんでした。 自分のルールでどちらを使うかを決め、検証で確かめる項目の一つになります。

よく紹介されるルールの例

ここでは、出典で紹介されているルールを並べます。 数値はすべて出典ごとの「例」で、最適値や推奨値ではありません。 どの出典も成績を示していないか、前提が不明なため、この記事では成績の数値を載せていません。

一定期間の高値・安値を使う例(チャネル)

一定期間の最高値と最安値で線を引く方法は、ドンチャン・チャネル(プライス・チャネル)と呼ばれます。 株式向けの解説(StockCharts)では、次のように紹介されています。

項目 内容(出典の例)
上限 20 日間の最高値
下限 20 日間の最安値
中心線 (上限+下限)÷ 2
計算の注意 当日を含まず前日までの値で計算するので、当日の価格がチャネルを超えることがある

上限を超えることは、20 日高値の更新を意味します。 終値だけで線を引くと、サインの一部をふるい落とせる、とも書かれています。

FX 向けの解説(IG 証券)では、次のような例が紹介されています。

項目 内容(出典の例)
時間足 1〜4 時間足
チャネル 期間 55
トレンドの方向 移動平均線・MACD・一目均衡表で判断する
抜けの判定 上昇トレンドではチャネル上限を 1 pip 超えたところ(下降は下限を 1 pip 下回ったところ)
損切り ポジションを持つと同時に逆指値を置く
手仕舞い 反対側のチャネルをトレーリングストップにする

歴史的な例:タートル・ルール

タートル・ルールは、先物の売買で使われたことで知られる歴史的なルールです。 次の内容は、二次資料(MQL5 の記事)で紹介されている例です。 原典の資料は、この記事の調査では確認できていません。

項目 二次資料で紹介されている例
入る条件 直近 20 本(システム1)または 55 本(システム2)の高値を、足の高値が超える(終値ではない)
損切り 2N(N は ATR に相当する値動きの大きさ)
手仕舞い 逆方向に 10 本、または 20 本の終値ブレイク

システム1には、直前の同じ方向の取引が勝ちなら次を見送る規則もあります。 これはだまし対策ではなく、すでに進んだトレンドで仕掛けるのを避けるための規則として説明されています。 タートル・ルールの全体像は、トレンドフォローの記事で紹介しています。

ボリンジャーバンドの収縮(スクイーズ)を使う例

ボリンジャーバンドの幅が大きく縮んだ状態は「スクイーズ」と呼ばれます。 幅が縮んだ後のバンド抜けを、ブレイクの手がかりとして使う考え方です。 株式向けの解説(StockCharts)では、20 期間・2σ のバンドを使う例が紹介されています。

この解説では、上のバンド抜けは強気、下のバンド抜けは弱気のサインと解釈されています。 ただし、スクイーズそのものには方向の情報がない、とも書かれています。 抵抗線・支持線のブレイクで確認すること、確認のないバンド抜けは失敗しやすいことも挙げられています。

収縮をどの期間と比べて判断するかは、同じ StockCharts でもページによって違います。 どちらも株式向けの例なので、この記事では具体的な期間は載せていません。

抜けた直後か、戻りを待つか

FX 向けの解説では、抜けた後の扱い方として次の 2 通りがよく紹介されます。

  • 抜けた直後を条件にする:抜けたことを確認した時点で判断する
  • 戻りを待つ:抜けた後、抜けた水準まで戻って支えられる(または抑えられる)のを確かめる

抜けた線は、逆の役割になると説明されることが多いです。 抵抗線は抜けた後に支持線に、支持線は割れた後に抵抗線になる、という考え方です。 この戻りの動きはリターンムーブと呼ばれ、定義と注意点はダブルトップや三尊の記事で解説しています。

レンジの上限を終値で上に抜けた後、抜けた線の近くまで戻ってから再び離れる経路と、戻らずに進む別の経路を、どちらも一例として示した図(架空のサンプルデータ)

戻りを待つ考え方には、複数の解説で共通する弱点があります。 戻らずにそのまま進むことがあり、その場合は機会を逃します。 すぐ対応できる経験者なら待たない選択もあり、初心者は待つほうがリスク面で安心、とする解説もあります。

戻りが見えにくいときは、下位の時間足で確認する例も紹介されています。 「待つ/待たない」は優劣ではなく、だましを避けやすい代わりに機会を逃すことがある、というトレードオフです。

だましと、その扱い

だましとは

だましとは、抜けたように見えた後、すぐに元の水準やレンジに戻る動きです。 「フォールス・ブレイクアウト」とも呼ばれます。 完全には避けられない、と複数の解説で明記されています。

株式向けの解説では、次のような例が紹介されています。

  • レンジの上限を一時的に上回った後、数日で下に戻り、その後は下限を割った
  • スクイーズ中に上のバンドを抜けてすぐ戻り、その後は下のバンドを割った(「ヘッドフェイク」と呼ばれる)

レンジの上限を終値で上に抜けた後、その後の足の終値でレンジ内に戻り、やがて下限の線を下に割っていく、だましの例を示した図(架空のサンプルデータ)

だましが起きる理由の説明

起きる理由としては、レンジ内に戻る動きと損切りの連鎖、などが挙げられています。 上抜けたように見えて戻り、改めて上抜ける形や、上抜けに見せかけて下げる形も紹介されています。 ただし、どれも解説の説明で、検証データが示されているわけではありません。

扱い方として紹介されているもの

複数の解説で共通している扱い方は、次のとおりです。

扱い方 内容
抜けた直後には判断しない 様子を見る、戻りを待つ
上位足のトレンドと同じ方向に限る 逆方向のブレイクは値幅が小さくなりがち、と説明される
損切りを先に決める ポジションを持つと同時に逆指値を置く
ほかの分析で確かめる ボリンジャーバンド、ATR、チャートパターン、抵抗線のブレイクなど
ローソク足の形を見る 長いヒゲで内側に戻る足、実体の小さい足はだましの可能性が高いとする解説がある

上位足のトレンドの確かめ方は、マルチタイムフレーム分析の記事で扱います。 トレンドの向きを移動平均線で読む方法は、移動平均線の使い方で解説しています。

出来高とオシレーターの扱い

株式の解説では、出来高でブレイクを確かめる方法がよく紹介されます。 FX には取引所のような出来高がなく、ツールによってはティックボリューム(値動きの回数)で代用されます。 株式の出来高の解説を、そのまま FX に当てはめないよう注意が必要です。

保ち合いの間のオシレーターの扱いは、解説によって分かれます。 保ち合い中はオシレーターも価格と一緒に平らになり、役に立ちにくいとする解説があります。 一方で、RSI のダイバージェンスを補助に使う例を挙げる解説もあります。

時間帯について

各市場の始まりや、営業時間が重なる時間帯に、取引とボラティリティが集中するという研究があります。 東京とロンドン、ロンドンとニューヨークが重なる時間帯がその例です。 反対に、早朝など取引が少ない時間帯は、スプレッドが広がりやすいとされます。

ただし、「この時間帯のブレイクは成功しやすい」と示したデータは、この記事の調査では見つかりませんでした。 時間帯でルールを分けたい場合は、時間帯ごとに記録して検証するのが確実です。 各市場が開いている時間は、トップページのいまの市場の時間帯で確認できます。

合わない相場と弱点

レンジ・方向感のない相場で損失が重なる

ブレイクアウトの代表的な弱点は、抜けては戻る動きが続く相場で、だましによる小さな損失が重なることです。 チャネルのブレイクにも、行ったり来たりのだましがあると指摘されています。 タートル・ルールの再現記事でも、方向感のない相場では大きなドローダウン(資金の落ち込み)の期間を覚悟するよう書かれています。

レンジの上限・下限で逆張りする側から見た考え方は、レンジ相場の逆張りの記事で扱います。

そのほかの弱点

  • 待つと機会を逃し、待たないとだましに遭う:判定の基準や戻り待ちは、どれもトレードオフになる
  • 機会が少ない:条件に合う場面が多くない、という点がデメリットとして挙げられている
  • 抜けた後の値動きが急:動きが速く、手仕舞いの判断が難しいという指摘がある
  • 収縮は方向を示さない:バンドの幅が縮んだこと自体には、方向の情報がない
  • 線の引き方に主観が入る:どの高値・安値を基準にするかで、抜けたかどうかも変わる
  • コストの影響:取引が少ない時間帯はスプレッドが広がりやすいとされる。抜けた直後を条件にするルールでは、その影響を検証で意識しておくとよいと考えられる

資金管理とセットで考える

だましは完全には避けられないので、損切りを先に決めておくことが多くの解説で共通しています。 ポジションを持つと同時に逆指値を置く、レバレッジをかけすぎない、という注意も挙げられています。

損切りの位置はルールによって違います。 「抜けた線の反対側」「反対側のチャネル」「2N」など、置き方が変われば損切り幅も変わります。 損切り幅が変われば、同じ許容損失に収めるための取引数量も変わります。

損切り幅から取引数量を求めるには、ロット計算ツールが使えます。 考え方は、ポジションサイジングの記事で解説しています。 だましで小さな損失が重なる前提なら、損益分岐となる勝率も確かめておくと安心です。 詳しくはリスクリワード比の記事を参照してください。

自分で検証する

ブレイクアウトのルールは、出典によって判定の基準も数値も違います。 自分が使うルールを書き出し、過去のチャートで記録して確かめるのが、この記事のゴールです。 検証ノートを使うと、記録から勝率や実績の損益比を集計できます。

1. ルールを 4 つの要素で書き出す

よく紹介されるルールは、どれも次の 4 つの要素で書けます。 検証を始める前に、それぞれを文章で決めておきます。

  • 水準:どの線を対象にするか。例)レンジの上限・下限、20 本の高値・安値、三角形の線
  • 判定:何で抜けたとみなすか。例)終値が線の外で確定、足の高値が線を超える、線から〇 pips の余裕
  • タイミング:抜けた直後か、戻りを待つか
  • 損切り:どこに置くか。例)抜けた線の反対側、反対側のチャネル

上位足のトレンドの向きに限るか、時間帯で分けるか、といった条件も、使うなら書き出しておきます。

2. 過去チャートで 1 回ずつ記録する

チャートを右へ 1 本ずつ進めながら、ルールに合った場面を探して記録します。 検証ノートには損切り幅と結果(pips)を入れ、メモ欄にルール名や時間帯を書いておくと後で比べやすくなります。 結果には、スプレッドなどのコストを差し引いた値を入れます。

3. 後知恵に注意する

過去のチャートは、その後の値動きが見えている状態で判断しがちです。 ブレイクアウトでは特に、「これはだましだった」と後から分かる場面を無意識に外してしまいやすくなります。 条件を先に決め、先のチャートを見ないで判断することが大切です。

テクニカル分析の研究を広く調べたサーベイ(Park & Irwin、2007 年)でも、注意点が挙げられています。 データを使いすぎて良く見えるルールを探すこと、ルールを後から選ぶことによる偏りです。 過去データで良く見えるルールほど、こうした偏りが入っていないか疑う必要があります。

なお、トレーディングレンジのブレイクを含むルールを検証した古い研究(Brock ほか、1992 年)もあります。 これは株価指数(ダウ平均)の研究で、FX で検証したものではありません。

4. 件数を集める

記録の件数が少ないと、勝率や期待値は偶然で大きくぶれます。 ブレイクアウトは、レンジの時期とトレンドの時期で結果が大きく変わりやすいと考えられます。 両方の時期を含むように件数を集めてから、集計を見るようにします。

集計はあくまで記録した内容のまとめで、将来の成績を示すものではありません。

関連ツール・関連記事


※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を勧めるものではありません。FX(外国為替証拠金取引)はレバレッジにより預けた証拠金以上の損失が生じる可能性があります。取引は内容とリスクを理解したうえで、ご自身の判断で行ってください。本サイトの記事はAIを用いて作成し、公開前に確認しています。