一言で言うと

一目均衡表の見方の基本は、5 本の線と「雲」で相場の状態を読むことです。 雲と価格の位置、転換線と基準線の関係、遅行スパンと過去の価格を比べます。 ただし線が多く、見方が人によって分かれやすい指標です。

一目均衡表を表示していても、5 本の線と雲の意味を説明できるでしょうか。 この記事では、各線の計算式と計算例、雲・転換線・基準線・遅行スパンの読み方を順に整理します。 「三役好転」と呼ばれる見方と、指標の弱点も紹介します。

仕組みと計算式

一目均衡表は、ローソク足に 5 本の線を重ねて使う、日本生まれのテクニカル分析の手法です。 5 本の線は、転換線・基準線・先行スパン1・先行スパン2・遅行スパンです。 先行スパン1と2のあいだの帯を「雲」と呼びます。

名前は「相場がひと目でわかる」ことに由来する、とされます。 英語圏では “one glance equilibrium chart” などと訳されています。 価格の幅(値幅)よりも時間の経過(日柄)を重んじる点が、ほかの指標との違いと説明されます。

考案者と考案の経緯

一目均衡表は、昭和初期(1930 年代)に一目山人(いちもくさんじん)が考案したとされます。 一目山人は、細田悟一のペンネームです。 都新聞の商況部部長を務めた人物と紹介されています。

私設の研究所を作り、7 年・延べ 2000 人の人手をかけて完成させた、とされます。 はじめは別の名前で発表され、のちに「一目均衡表」と改名されたとされます。 その後、書籍のシリーズで一般に公開されたとされます。

なお、この記事の考案者や経緯の説明は、証券会社の解説などの二次情報によるものです。

線は「高値と安値の中間値」で作る

一目均衡表の線は、終値の平均ではありません。 一定期間の最高値と最安値を足して 2 で割った「中間値」で作ります。 遅行スパンだけは、終値をそのまま使います。

5 本の線の計算式

日足の一般的な設定値(9・26・52)で書くと、次のとおりです。 期間はいずれも「本日を含む」過去の本数です。

  • 転換線 =(過去 9 本の最高値 + 過去 9 本の最安値)÷ 2
  • 基準線 =(過去 26 本の最高値 + 過去 26 本の最安値)÷ 2
  • 先行スパン1 =(転換線 + 基準線)÷ 2 を、26 本先に描く
  • 先行スパン2 =(過去 52 本の最高値 + 過去 52 本の最安値)÷ 2 を、26 本先に描く
  • 遅行スパン = 本日の終値を、26 本前に描く

先行スパンを先へ、遅行スパンを後ろへずらす幅は、基準線の期間に連動すると説明されます。 基準線の期間を変えると、ずらす幅も変わるということです。

大和証券は、各線を移動平均線にたとえています。 転換線は 9 日、基準線は 26 日、先行スパン1は 17.5 日、先行スパン2は 52 日の移動平均と「ほぼ同じ動き」という説明です。 ただし計算方法は違うので、あくまで近いイメージとして捉えてください。

ローソク足に5本の線を重ね、雲が本日より先まで、遅行スパンが本日より前にずれて描かれることを示す一目均衡表の全体図(期間を縮めた模式図、サンプルデータ)

「26 本ずらす」の数え方

ずらし方は、本日を含めて 26 本先(データ上は 25 本のずれ)に描く数え方が一般的です。 本日を 1 本目と数えると、26 本目は 25 本先になるためです。 ツールによって 1 本ずれることがあるので、見比べるときは注意してください。

本日を1本目と数えると、本日の終値は26本目(25本前)に遅行スパンとして、本日の計算値は26本目(25本先)に先行スパンとして描かれることを示す図(サンプルデータ)

計算例

架空の数値で計算してみます。 ドル円風の値ですが、実在のデータではありません。 本日を含む直近の高値・安値が、次のとおりだったとします。

期間(本日を含む) 最高値 最安値
9 本 152.00 150.20
26 本 153.00 149.00
52 本 154.00 147.60

本日の終値は 151.40 とします。

  • 転換線 =(152.00 + 150.20)÷ 2 = 151.10
  • 基準線 =(153.00 + 149.00)÷ 2 = 151.00
  • 先行スパン1 =(151.10 + 151.00)÷ 2 = 151.05(本日を 1 本目として 26 本目に描く)
  • 先行スパン2 =(154.00 + 147.60)÷ 2 = 150.80(同じ位置に描く)
  • 遅行スパン = 151.40(本日を 1 本目として 26 本前の位置に描く)

26 本目の位置の雲は、上限が 151.05、下限が 150.80 で、厚さは 0.25 です。 先行スパン1が上にあるので、多くのツールでは「陽の雲」の色で塗られます。

一般的な設定値

日足では、転換線 9・基準線 26・先行スパン2 52・ずらし 26 が一般的な設定値です。 考案者が日足での分析を前提にしていたため、一般に日足で使われるとされます。 MT5 のヘルプのように、週足・日足で最もよく機能するとする解説もあります。

9・26・52 という数値の由来には、当時の週 6 日の取引に合わせたという説があります。 ただし、この説の根拠は示されておらず、考案者自身の説明は確認できていません。 日本の証券会社の解説も、由来は説明していません。

ほかに紹介されている設定の例

3 つの期間を変えられるツールもあります。 解説で挙げられている例には、8・21・42、10・30・60、20・60・120 などがあります。 いずれも紹介されている例で、最適値や推奨値ではありません。

期間を短くすると反応が早くなる一方、だましが増えるとされます。 長くすると、反応が遅れるとされます。

チャートでの読み方

ここで紹介するのは、一般にこう読まれているという見方です。 どれも将来の値動きを決めるものではありません。

雲:価格との位置と厚さを見る

位置 価格が雲の上にあれば上昇基調、下にあれば下降基調と読まれることが多くあります。 雲の中にあるときは、方向感がない、または移行中と解釈されます。

支持・抵抗 雲は、下値の支え(支持帯)や上値の壁(抵抗帯)として意識されやすいとされます。 MT5 のヘルプは、価格が雲の上なら雲の上端を第 1 の支持、下端を第 2 の支持としています。 価格が雲の下なら、その逆です。

厚さ 雲が厚いほど価格は抜けにくく、薄いほど抜けやすい、とされます。 「雲が薄いところは変化が起きやすい」とする解説もありますが、方向までは示していません。

雲は 26 本先まで描かれます。 そのため、この先の支持・抵抗の目安として紹介されることが多くあります。

価格が雲の上・中・下にある3つの場面と、雲の厚い部分・薄い部分、先行スパン1と2が入れ替わる雲のねじれを示す図(期間を縮めた模式図、サンプルデータ)

雲の色とねじれ

先行スパン1が上なら陽の雲、先行スパン2が上なら陰の雲として、色を分けて塗るツールが多くあります。 2 本の線が入れ替わる点は「雲のねじれ」と呼ばれます。

ねじれの意味は、解説によって分かれます。 流れの変化の候補とする解説もあれば、方向感がないことを示すとする解説もあります。 意味は一つに定まっていない、と考えておくのが無難です。

転換線と基準線の関係

転換線が基準線より上にあれば強い、下にあれば弱いと読まれます。 転換線が基準線を下から上に抜けることを「好転」、上から下に抜けることを「逆転」と呼びます。

  • 基準線の向き:上向きか下向きかも見る。基準線の上昇を伴わない上昇は短命に終わる、とする解説がある
  • 転換線の横ばい:転換線が横ばいならレンジ(方向感のない値動き)とする説明もある
  • クロスの位置:好転・逆転は、雲の上(下)で起きたほうが意味が強いと紹介される

StockCharts は、強いトレンドの最中はこのクロス自体が少ないと指摘しています。 そのため、価格と基準線の交差のほうが多く現れる、としています。

遅行スパン:26 本前の価格と比べる

遅行スパンは、本日の終値を 26 本前に描いた線です。 26 本前のローソク足より上にあれば強い、下にあれば弱いと読まれます。

大和証券は、遅行スパンを見ることは結果的に移動平均の向きを見ることになる、と説明しています。 価格と移動平均線の関係から相場の局面を読む「グランビルの法則」と同じ考え方だ、という説明です。 グランビルの法則は、移動平均線の使い方で紹介しています。

三役好転・三役逆転と呼ばれる状態

「三役好転」は、次の 3 つの条件がそろった状態の呼び名です。

  1. 転換線が基準線より上にある(上抜ける)
  2. 遅行スパンが 26 本前のローソク足より上にある(上抜ける)
  3. ローソク足が雲より上にある(上抜ける)

「三役逆転」は、この 3 つがすべて逆になった状態です。 解説によって、「上抜けた」という出来事で書くものと、「上にある」という状態で書くものがあります。

三役好転は強い上昇の状態、三役逆転は強い下降の状態を示すとされる見方です。 ただし、この状態がそろっても、その後の値動きの向きが決まるわけではありません。 松井証券は、これらの発生頻度は限られていると説明しています。

Wikipedia(日本語版)は、時間論・値幅観測論・波動論を考えずに機械的に使うのは危険と注意しています。

時間論・波動論・値幅観測論(概要)

一目均衡表には、5 本の線のほかに 3 つの理論があるとされます。 ここでは名前と概要だけを紹介します。

時間論 大きな高値・安値から日数を数え、決まった日数(基本数値)がたったところで相場の変化が起こりやすい、という考え方です。 変化には転換だけでなく、加速や延長も含むとされます。 該当日に必ず変化が起こるわけではない、とも説明されています。

波動論 値動きを形で分類する考え方です。 一方向に動く I 波動、上げて下げる(下げて上げる)V 波動、上げ・下げ・上げの N 波動が基本です。 N 波動が基本形とされます。

値幅観測論(水準論とも呼ばれる) 安値 A → 高値 B → 安値 C の動きから、次の目安となる値を計算する考え方です。 次の 4 つの計算値が紹介されています。

  • E 計算値 = B +(B − A)
  • V 計算値 = B +(B − C)
  • N 計算値 = C +(B − A)
  • NT 計算値 = C +(C − A)

考え方の例として、A = 100、B = 110、C = 105 とすると、E = 120、V = 115、N = 115、NT = 110 になります。 これは計算の仕組みを示すための架空の数値です。 計算値まで価格が届くことを前提にした見方ではありません。

だまし・弱点と、相性のよい組み合わせ

主な弱点

  • 線が多く、判断が分かれる:5 本の線と雲の組み合わせが複雑で、判断が難しい。大和証券も、使い方を一つに言い切れないところがあると説明している
  • 画面が混み合う:線が多いため、チャートが見にくくなりやすい
  • 理論の全体像がつかみにくい:3 つの理論まで含めると習得が難しく、根底の理論は難解とされる
  • 遅れて動く:過去の高値・安値から作るため、将来を予測するものではない。期間を長くすると反応はさらに遅れる
  • だまし:一つの見方だけで判断すると、だましが起こりやすい
  • レンジや急な値動きに弱い:レンジ相場では読み方があいまいになり、指標発表などの急変時には機能しないことがある
  • 三役好転・逆転は出現が少ない:タイミングよく使いにくい
  • 時間足で食い違う:見る時間足によって、読み方が食い違うことがある
  • 雲が遠くなる:長いトレンドでは雲が価格から大きく離れ、目安として使いにくくなることがある。その場合は転換線・基準線が重要になるとされる
  • 価格だけで作る:需給や取引量は考えに入っていない
  • ツールで 1 本ずれる:ずらしの数え方の違いで、線の位置が 1 本ずれて見えることがある

検証した研究の例

一目均衡表のルールを、株価指数と主要通貨ペアで検証した研究があります(Deng ほか、2021 年)。 要旨によると、通貨ではパラメーターを変えて探しても利益の出る設定が見つからなかった、とされます。 ただし、確認できたのは要旨だけで、取引コストの扱いなどの前提は分かっていません。

この研究だけで、一目均衡表が有効か無効かを決めることはできません。 ルールや期間、市場が変われば結果も変わりうるためです。

相性のよい組み合わせ

多くの解説で共通しているのは、「一つの指標だけで判断しない」ことです。

オシレーター・MACD 雲でトレンドを判断し、買われすぎ・売られすぎはオシレーターで見る組み合わせが紹介されています。 だまし対策として MACD や RSI との併用を挙げる解説もあります。 StockCharts は、9・26 という期間が MACD と同じだと指摘しています。 MACD の読み方は、MACDの使い方で解説しています。

移動平均線 各線を移動平均線にたとえる解説があるように、考え方の近い指標です。 移動平均線の使い方と見比べると、違いをつかみやすくなります。

大きなトレンドの方向 StockCharts は、大きなトレンドと同じ向きの動きを重視し、逆向きの動きは弱いとみています。 複数の時間軸の組み合わせ方は、マルチタイムフレーム分析の記事で解説しています。 トレンドに沿って売買する考え方は、トレンドフォローの記事で紹介しています。

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